‘Heresy’Just a dash duo – Jammy cobbler & Dundee cake explosion

Jammy cobbler : 2026.06.04発売 Dundee cake explosion : 2026.07.03発売
スモールバッチによる実験的なリリースシリーズ『ヘレシー』に、新たな2つの商品が加わった。今回は、ウイスキー業界で行われている「ティースプーニング」と呼ばれる手法に焦点を当てている。
ジュリアン・ウィレムスがその仕組みを詳しく解説するとともに、「Just a dash(ほんのひとさじ)」というティースプーニングによるペアボトル、「Jammy cobbler」と「Dundee cake explosion」について内容や見どころについて紹介する。
Just a dash duoは、それぞれ元となった蒸溜所の個性を色濃く残した仕上がりとなっている。
「ティースプーニング? それって一体何のこと? どうしてそれを知る必要があるの?」
ウイスキーの世界でもとりわけ専門的で分かりにくい話題のひとつだけに、SMWSの会員の多くが疑問に思っても無理はない。実際、この手法は業界では広く行われているものの、蒸溜家や事情に詳しい愛好家のあいだを除けば、あまり語られることはない。
まず、“ティースプーニングとは何か”という点については比較的シンプルだ。
SMWSのヘッド・オブ・ウイスキー・クリエイションであるユアン・キャンベルは次のように説明する。
「ティースプーニングとは、あるシングルモルトに別のシングルモルトをごくわずか――伝統的にはティースプーン1杯ほど――加えて混ぜることを指します。」
では、なぜそんなことをするのだろうか。
「この方法を使えば、蒸溜所は自分たちのウイスキーをブレンダーに販売できる一方で、そのウイスキーが蒸溜所名を冠したシングルモルトとしてボトリングされることができなくなります。」とユアンは説明する。
「たとえ樽の中に加えられるのがティースプーン1杯ほどの別のウイスキーであっても、その時点で実質的には“ブレンデッドモルト”になるのです。」
すると、こんな疑問を抱く人もいるだろう。
「では、なぜSMWSが、そんなブレンデッドモルトをボトリングしているのか?」 と。
これらのウイスキーは、元の蒸溜所の特徴に驚くほど近い味わいを持っています。だからこそ、そのままボトリングする価値があるのです。
さらに言えば、こうした蒸溜所の原酒は入手が非常に難しく、ウイスキークラブや独立ボトラーにはほとんど手が届かないことも多い。多くの場合、それらのモルトはオーナー企業のブランド向けのシングルモルトとして瓶詰めされるだけで、外部に出回ることはほとんどない。
ティースプーニング処理により、どちらのボトルもブレンデッドモルトとなった。
ジャスト・ア・ダッシュ ー ジャミー・コブラー
さて、基本的な話はここまでにして、スモール・バッチ「ヘレシー」シリーズ最新作を見ていこう。今回は、ティースプーニングされた2種のウイスキーが、クリアガラスボトルでリリースされている。
まずは『ジャスト・ア・ダッシュ ー ジャミー・コブラー』。
18年熟成のブレンデッドモルトで、メインとなる蒸溜所(Code:40)のスタイルを色濃く受け継いだ、上品でありながら華やかな果実味が魅力だ。
とはいえ、ソサエティらしく一筋縄ではいかない。
この『ジャスト・ア・ダッシュ ー ジャミー・コブラー』は、ティースプーニングされたモルトを熟成したファーストフィルのバーボンバレル2樽を、セカンドフィルのスペイン産オークPXバットにブレンドし、さらにおよそ8年の追加熟成を施した1本である。
その完成度は語るまでもない。チョコレートライムの軽やかな酸甘さから、マンゴーへと跳ねるように展開し、さらにダークなデメララシュガー由来の深みと、バランスの取れたスパイスが幾層にも重なっていく。
スペイン産オークはファーストフィルほど前面には出ないものの、しっかりと存在感を発揮している。アルコール度数は50%まで加水調整されているが、さらに水を加える余地もあり、より穏やかな口当たりへと変化。ローストしたピーチやココナッツに加え、バーボンの面影、オールスパイス、パンケーキに塗ったヘーゼルナッツスプレッドのニュアンスが広がる。
フィニッシュは滑らかで、オレンジのような柑橘感に、砂糖漬けレモン、樽のチャー、フェンネルシードの香りが長く続く。
「ダンディー・ケーキ・エクスプロージョン」は、選りすぐりのオロロソ・ホグスヘッドでさらに追加熟成が施されている。
ジャスト・ア・ダッシュ ー ダンディー・ケーキ・エクスプロージョン
今回は、Code:125のシングルモルトになりかけた原酒だが、シングルモルトとしてではなく、別ブランドで展開するため、ティースプーニングが施されたウイスキーである。
こちらは、ファーストフィルのアメリカンオーク製オロロソ樽2樽で構成されている。「ダンディー・ケーキ・エクスプロージョン」の原酒は、それぞれのオロロソ・ホグスヘッドに移される前、バーボン樽で19年間熟成されて、そこからシェリー樽でさらに3年間の熟成が加えられている。
その仕上がりは、その名のとおり、まさにダンディーケーキが弾けるような味わいだ。
ダンディーケーキに馴染みのない方のために補足すると、これはスコットランドのダンディー発祥で、マーマレード作りを営んでいた地元の一家に由来するケーキである。
表面にあしらわれたブランチドアーモンドが特徴で、ドライフルーツやマーマレードの風味を主体に、時にグラッセチェリーの甘やかさが加わり、ウイスキーやシェリーで香り付けされることもある。
――なるほど、このウイスキーに重ねられたイメージとして、これ以上ないほどふさわしい。
そこにブランデーバターのコクが重なり、さらにトロピカルフルーツやピーチ、アプリコット、塩キャラメルのニュアンスが広がる。やがてマルメロのペーストやココナッツクリームが、マジパンと絡み合うように現れる。
ひとさじの加水で印象は一変し、ポーチドペアやパッションフルーツ、チョコレートのスイスロール、マンゴープディングといった風味が一気に押し寄せる。フィニッシュは、メンソールを思わせる清涼感と甘やかなハニーサックルに、赤りんごのニュアンスがほのかに重なる。
愛情たっぷりのひとさじ
では、これを否定する理由があるだろうか。確かに、手に入りにくいものがあるのは世の常だが、今回の「Heresy」シリーズ、「ジャミー・コブラー」と「ダンディー・ケーキ・エクスプロージョン」は、シングルモルトの枠の外縁にこそ潜む魅力を見事に示している。たとえブレンデッドモルトという定義を、形式的に満たしているに過ぎないとしても、その中身は実に魅力的だ。
時の経過によって円みを帯び、シェリー樽の手仕事によってさらなる深みを与えられたこれら2つのティースプーン・ウイスキーは、他にはない個性を味わう確かな機会となる。それでいて、それぞれのルーツに由来する美点や個性もしっかりと感じられるのが興味深い。
お気に入りのソファや椅子でゆったりとくつろぎながら、ぜひどちらか、あるいは両方のボトルを開けてみてほしい。グリーンボトルではめったに出会えないタイプのモルトが、そこにある。